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Jの頂きを目指して ジュビロ磐田の躍進を支えた地道な歩みと名波監督の「イズム」(Football ZONE web)

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2017年は6位に躍進 名波監督はチーム作りの進捗を「3分の1か半分くらい」と表現


Jの頂きを目指して ジュビロ磐田の躍進を支えた地道な歩みと名波監督の「イズム」

名波監督はチーム作りの進捗を「3分の1か半分くらい」と表現【写真:Getty Images】

「どうだろう。3分の1か半分くらいまで来たんじゃないかな」

 2017年シーズン終了を前に、チーム作りの進捗具合を訊かれた名波浩監督の答えだ。

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 14年の9月末にJ2で不調にあえぐ磐田を預かり、昇格を果たせずにシーズンを終えた時点での同じ質問には、「まだ2ページ目。本は2万ページ、厚さがある」と答えている。再びJリーグの頂きを目指すサックスブルーの物語は、3年間でかなりページが進んだことになる。なかでも、読者にとって今季の『章』は、読みごたえがあっただろう。

 昨季13位に終わった順位は、6位へと大きくジャンプアップ。とりわけ守備面の充実は特筆もので、30失点はリーグ最少。2016年が50失点で、開幕前に監督が得失点差『±ゼロ』を最低限の目標としていたことを考えると、同+20は快挙と言ってもいい。その裏には、昨季の苦しい戦いの中で張られた“伏線”があった。

“絶対的使命”を課されるなかで成長を追求

 名波監督は、就任と同時に「攻守にアクションを起こし、人もボールも動くアグレッシブで攻撃的なサッカー』を標榜し、長期的なビジョンで一から立て直しに着手。チーム全体の底上げを図るべく、勝敗だけに拘泥せず、段階を踏んだチーム作りと選手育成を続けてきた。結果の責任が問われる立場で、このようなやり方を貫くのは簡単なことではない。しかし、名波監督はJ1昇格や残留という“絶対的使命”が課せられたなかでも、ゲーム内容や選手・チームの成長を重視してきた。

 3年ぶりにJ1復帰を果たした昨季、第1ステージは4バックをメインシステムに戦って8位。ただ、3バックを採用した第2ステージは戦績が落ち込み、残留争いに巻き込まれた。それでも、指揮官が12試合で3バックを使い続けたのは、システムに対する汎用性を持たせる以上に、目指すサッカーの土台を固めるためでもあった。

 磐田の3バックは、基本的に5バックにならず、両ウイングバックが高い位置を保つことがコンセプトだ。3人で守るため、横のスライドやサイドの選手を前へ押し出す縦のスライドに関して、4バックよりも速い判断と動き、意志統一が必要になる。構築を進めているサッカーは攻守一体で、良い守備は良い攻撃につながる――。身につけば、ボールも滑らかに動くようになり、素早く連動する守備を選手たちに習得させる狙いがあったのだ。

 そうした“鍛練”の成果にプラスして、2017年はキャンプから「横ズレ・縦ズレ」をしながら中を締める意識、プレーを強化したことで、相手に縦パスを入れられる回数が激減した。さらに、目指すサッカーの軸であり、J2時代から取り組んできている、後ろに下がらず、攻守で前へ前へ仕掛けていくアグレッシブなプレーが選手にも定着。序盤戦こそ波はあったが、守備面が大きく崩れることはシーズン最後までなかった。新戦力と選手に寄り添う采配が見事に融合


Jの頂きを目指して ジュビロ磐田の躍進を支えた地道な歩みと名波監督の「イズム」

中村俊輔をはじめとする新戦力と選手に寄り添う采配が見事に融合【写真:Getty Images】

 今季の躍進を語るならば、新しい登場人物たちの活躍は落せない。足の痛みを抱えながらも全試合に出場した日本代表FW川又堅碁は、前線の守備と活発な動き出しで貢献。センターバックの高橋祥平は攻守で推進力を発揮し、正確なフィードでボール奪取後のファーストプレーの質を引き上げた。

 そして、「(移籍は)名波監督の存在が大きかった」と話す元日本代表MF中村俊輔がもたらした相乗効果も計り知れない。セットプレーからの得点力は言わずもがな。守備の献身性や練習態度は手本となり、必ずパスが出てくるという信頼が周囲の動きを活性化させた。チームが発展途上にあって、ゲームの支配力と卓越したサッカー頭脳を持つ司令塔の存在感は絶大だった。

 完全な“自由”を与えられていた中村だが、シーズン序盤、新10番のポジションは低すぎることがあった。そのため、ブロックや前へ仕掛ける位置も時折低くなっていたが、名波監督はその頃、選手たちに「ずっとやってきていること、キャンプでやったことを思い出そう。あと3メートル高いところで(守備を)仕掛けたい。しかし、(ピッチの)中の温度は大事にしろ」と話している。

 名波監督は実際にピッチに立っている選手の考えや気持ち、やれる、やれないと感じる感覚を大切にする。頭ごなしに押しつけるのではなく、選手に添いながら底上げを図る、「現実に足をつけて理想を追う」スタンスは一切ブレていない。

 ディフェンスリーダーであり、今季キャプテンマークを巻いたDF大井健太郎は、「言うことを聞かないと試合に出られないと言う監督もいるかもしれない。でも名波さんは、選手に対して『お前はできない』とか、『お前とは合わない』で終わらせない。選手が納得する形を考えてくれるし、誰にでも最大限歩み寄って、チームを作っている」と話す。

 昨季までは選手がバラバラに前に仕掛けて失点を招くことが多かったが、今季は試合を上手く運び、完封や勝利に結びつけた。「闇雲に前に行くのではなく、受け身にならず、バランスをとって守りながら、ここぞという場面で意図を合せて仕掛けることもできた」と、大井は振り返る。「性格的に自分は一段一段登るタイプ」

 監督は今季、フリーズトレーニング(プレーを止めて指示する練習)を増やすつもりでシーズンに入った。しかし、実際はフリーズする回数はまったく増えなかったという。自分が止める前に、選手が課題に気がついて声をかけるからだ。

「『今のプレーはどうだった?』と訊くと、J2の時は『まあまあっす』という抽象的な答えしか返ってこなかった。でも、今は『あの自由な動き出しが良かった』とか、『このシステムならこうすべき』とか具体的な答えがスパーンと返ってくる。変わったな、と思う」

 選手を「息子たち」と呼ぶ名波監督は、彼らの成長をそう評して目を細める。

 一方で好成績に緩まないよう、手綱を引き締めてもいる。夏に6連勝をして自信をつけ、第19節の敵地・川崎戦では5ゴールを挙げて勝利。最終戦では往年のライバルにして、名波監督が「目標であり憧れ」とリスペクトを隠さない常勝鹿島アントラーズの胴上げをホームで阻止した。それでも、指揮官は6位という結果ではなく、チームの成長曲線、自分たちの“真の立ち位置”から目を離していない。

「ここで勘違いしてはいけない。それで痛い目にあったチームはたくさんある。一人抜けただけでガクンと落ちる、あるいは慢心で落ちる例は山ほどある。我々はまだまだ力がない。今季は出来すぎのところもある。地に足をつけていかなければいけないし、性格的にも自分は一段一段登るタイプ。そういう意味では、ここが締め時と言えば締め時」

 次の試合だけではなく、常に“その先”に焦点を合わせた目標を置いて戦っている名波監督は、来季に向けたテーマをシーズン半ばに決め、取り組み始めている。

 就任時は、「攻守の切り換え」「セカンドボールの予測」「シュートへの意識」「コミュニケーション」の4か条を掲げた。その次に、球際、対人の強さを取り戻すために、「さぼらない」「諦めない」「集中を切らさない」という三つの約束事を設定。それが体現でき始めたところへの“上塗り”として、来季は「自分たちは休まず。相手を休ませないこと」の徹底を図る。新しいシステムの導入も示唆しているが、優勝争いを目標に掲げるのは、それらの強化テーマをクリアしてからと明言する。

「自分の口から例えば『トップ3』といったはっきりした目標を言えるのは、今ではない。来年やるべきことをやって、Jを獲りにいく、頂きに向かうぞ、と言える」

 シーズンの最後に、名波監督はそう語った。

「ナーガソンになりたい」


Jの頂きを目指して ジュビロ磐田の躍進を支えた地道な歩みと名波監督の「イズム」

「ナーガソンになりたい」名波監督が率いる磐田の物語は、まだぶ厚いページが残る【写真:Getty Images】

 プレミアリーグの名門マンチェスター・ユナイテッドで長期政権を築いたアレックス・ファーガソン監督にかけて、「ナーガソンになりたい」と話す名波監督が率いる磐田の物語は、まだぶ厚いページが残る。

 このままスムーズに頂きに向かうのか、それとも山あり谷ありなのか。「優勝の章」はあるのか。いずれにせよ、今季はこの先を読み進むのを楽しみにさせてくれるものだった。

高橋のぶこ●文 text by Nobuko Takahashi

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