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名波ジュビロ、「出来過ぎ」の2017年。34試合30失点、戦い方の統一で到達したリーグ最少失点(フットボールチャンネル)

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名波ジュビロ、「出来過ぎ」の2017年。34試合30失点、戦い方の統一で到達したリーグ最少失点

カミンスキーの存在も最少失点の実現には不可欠だった【写真:Getty Images】

 今季、ジュビロ磐田は6位でシーズンを終えた。34試合で失点はわずか『30』。リーグ最少を達成したことからもわかるように、躍進の一因として守備面の向上があったのは間違いない。チームとしての戦い方が統一され、ディフェンス陣とGKも質の高い働きを見せた。前年からのジャンプアップを果たしたが、この結果を選手・監督はどのように捉えているのだろうか。(取材・文:青木務)

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名波ジュビロ、「出来過ぎ」の2017年。34試合30失点、戦い方の統一で到達したリーグ最少失点

ジュビロ磐田の名波浩監督【写真:Getty Images】

●「出来過ぎ」の成績。リーグ最少失点という勲章

 名波浩監督は、今シーズンを「出来過ぎ」と表現する。J1復帰初年度の2016年は最終節で残留を決めるなど苦しい1年だった。得点は37と伸び悩み、一方で50失点を喫している。得点を増やし、失点を減らす。2017年の目標を端的に記すとこうなる。

 果たして、サックスブルーは6位へ飛躍。対戦相手にとって侮れないチームへ変貌を遂げ、当初掲げた「得失点差±0」を軽やかに超えて見せた。新加入選手による好影響や既存選手のレベルアップ、それに伴う競争の激化はチーム力を引き上げた。

 抜擢された選手は活き活きとプレーし、3バックと4バックを併用しても戦い方がブレることがなかった。各々が磐田の一員であることを自覚し、集団の中で存在感を発揮しようとしたからこそ一枚岩となってシーズンを送ることができた。

 試合を重ねるごとに自信を深めていったチームは、リーグ最少失点という勲章を手にした。昨シーズンは前線からのプレスがことごとくはまらず、最終ラインの裏をひたすら破られた。ゴールマウスを守るのが名手・カミンスキーであっても、ノーチャンスの失点が多かった。

 だが、チームは規律ある戦いと粘り強さを発揮し、堅守を手にした。前年はどんなに粘っても及ばないシーンがあったが、その点が改善。むしろ常に自分たちの守備範囲内でプレーすることができ、カミンスキーの仕事も大幅に減少した。

 最少失点の要因は様々で、ピッチに立つ全員の力によるものだ。その中でディフェンスリーダー・大井健太郎を中心とした門番たちは、どんなことを考えながらシーズンを送ったのだろうか。そして、名波監督はどこに手応えを感じているのだろうか。


●「セーフティゾーンが実はデンジャラスだったりする」

 チームの戦い方が確立されていく過程で、ある時期から見なくなった練習メニューがある。守備の構築、錬度が高まったことで行う必要がなくなったとも言える。名波監督は語る。

「フリーズゲームは5月くらいまでは相当やっていると思う。浸透されている速度がやっぱり去年とは雲泥の差で、去年は御殿場でのミニキャンプ(10月後半)でもそれをやらなきゃいけなかった。でも今年は6連勝以降にフリーズゲームをやったのは数回かな。そのうちの1回は(途中加入の)山田(大記)のためにやったようなもんだから」

 プレーごとに中断しながら選手の立ち位置を修正し、プレスのタイミングやかけ方を共有していく作業が今シーズンは随分と少なかった。一人ひとりがチームとしてやるべきことを実践しているからこそ、逐一レクチャーする必要がなくなった。理解が深まるにつれて、選手たちの危機察知能力もよりクリアに働くようになったという。名波監督が続ける。

「ここら辺がセーフティエリア、だというのが実はデンジャラスゾーンだったりする。その感度が良くなってきたかなと。そのセンサーでみんながすぐにスイッチが入るし、揃い始めているから失点が少ない」

 守備の要である大井は「いつもデンジャラスゾーンだと思って、ビビりながらやっていますよ」と冗談めかして笑ったが、危機感を絶やさず最終ラインを束ねた彼の存在が、ピンチを防ぐ、失点を減らすことに大きく貢献したのは明らかだ。


●守備時に保たれた選手間の距離

 今シーズンからサックスブルーの一員となり、守備の安定に大きな役割を果たしたのが高橋祥平だ。けがのため出遅れたが、4月の復帰以降は主力として稼動した。

 この万能型DFは「守備での判断は絶対に間違えないようにと思っている。そこを間違えたら失点に繋がるので。球際とかもそうだし、ボールに対して一つの判断ミス、一つの油断だけでゴールまで持っていかれてしまうので、そういうところは絶対に間違えちゃいけない」と、センサーを切らさず高い集中力でシーズンを戦い抜いた。

 無闇に前から行かなくなったことで、選手間の守備時の距離は必然的に保たれた。攻め込まれるシーンはあっても対応できる。即ピンチに繋がっていた昨シーズンとの大きな違いだ。

「一番危ないところというのはペナ付近だけど、それ以前のところ、ハーフウェイラインくらいから始まっているわけで、そこで自分たちはチャレンジに行けている。そこを越えられたとしてもその後のカバーというところも、ラインの高さやみんなのポジショニングで補えている部分がすごくある。

 一度チャレンジするところで失敗しても、その次に取れればいいという考えもある。逆に1個目のハーフウェイライン付近の危なくないようで危ない場面で取れたらビッグチャンスになるし。そういったところの見極め、コミュニケーションはよく取れているのかなと」

 ウイングバックやサイドバックで活躍した宮崎智彦は、ボールにアプローチできるシチュエーションが明確になったと指摘する。仮にそこを抜けられたとしても、後ろに味方が控えているという信頼のもとでプレーできた、とも。安心感とも言い換えられるが、各エリアでしっかりと手を携えて守備を行えたことが失点減の一因ではないだろうか。


●カミンスキーの良さが「いまひとつ伝わっていない」(名波浩監督)

 Jリーグベストイレブンは、柏レイソルで印象的なパフォーマンスを見せた中村航輔に譲ったものの、カミンスキーの存在も最少失点の実現には不可欠だった。

 昨シーズンは『1試合に何度もファインセーブを見せる』という表現が大げさでないほど忙しかった。だが、今シーズンは際どいシュートを放たれる場面自体が激減。代わりにポジショニングの良さやキャッチングの技術で周囲を唸らせた。名波監督は手放しで称賛する。

「被シュート数が少ないからファインセーブも少ないんだけど、キャッチしている作業とかを評価してほしい」

 一見すると弾き出すしかないようなボールも、ポーランド人守護神は何事もなかったかのように手中に収めてしまう。さらに指揮官は、ある試合でのビッグセーブを引き合いに出し、カミンスキーの魅力を説明する。

 明治安田生命J1リーグ第32節・柏戦の77分だった。後に日本代表に選出される伊東純也がカットインから左足でシュートを放つ。素晴らしいコースに飛んだが、立ちはだかったカミンスキーが右手の指先で触るとボールはわずかに軌道を変えてポストに直撃した。

「靴二足分、前に出られるからグローブの先に触れる。カミックは前で触るからボールが曲がりきる前に触れちゃう」

 この試合は前半にオウンゴールで失点し敗れたが、後半は磐田が反撃を見せていた。そんな中での伊東のシュートだったが、カミンスキーは集中を切らさず対応し、相手に追加点を許さなかった。「あいつはヤバイんだよ」と言う名波監督は、「それが今いまひとつ伝わっていないんだよなあ」と残念そうな表情を浮かべた。

 大井が欠場の際にはキャプテンマークを巻くなど、カミンスキーはチームから厚い信頼を獲得している。


●危機感を持ちながらも成功体験を上積みした1年

 昨シーズンの無失点試合は『7』。対して今シーズンは『14』と2倍に伸びた。手応えも充実感もあったはずだが、大井は「気づいたらそうなっていたという方が大きい」と口にする。

「もちろん失点を減らそうと思ってきた。やっていく中で複数失点が少ないなとか、そういうのは感覚的にもわかるものだけど、相手ありきのことなので。本当に試合に勝てればなんでも良いと思う。でも、自分が貢献できるのは失点を減らすことだった」

 宮崎はこの順位を「想像もしていなかった」と正直に打ち明けた。

「今年はよく勝ったなという試合が多かったので、チームとして成長してきている部分だと思う。今年新加入選手が入ってきて、勝ちに持っていけるようになってきたのかなと。ちょっと、強さも感じてきた1年だった。去年色々チャレンジしたことだったり、今年からこうやっていこうという上積みだったりがうまくハマってきているのかなと」

 1試合1試合、危機感を持って臨み、その過程で得た成功体験の積み重ねがチームをより逞しくしていった。

「負けないゲームや自分たちが内容として押し込めるゲームが続いて、最後まで来たと思う。来シーズンへの想いというのはより強くなる。ただ、地に足をつけてやらないと。毎回言っているが、上位にいてあぐらをかいていたら残留争い、もしくは降格するクラブを何チームも見てきているので。一段一段という性格だし、一歩ずつ進んでいきたいと思う」

 鹿島アントラーズとの最終節を終え、名波監督は語っている。期待も高まるが、上ばかり見て目先のことが疎かになっては本末転倒だ。得たものは多いが、現状のままで来シーズンも同じ結果を得られるとは思ってはいない。

 望外の成果を無駄にしないためにも、歩みを止めてはならない。いつか再び頂点に君臨した時、2017年がきっかけだったと振り返るためにも。

(取材・文:青木務)

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